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大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)54号 判決

控訴人(原告) 高島剛

被控訴人(被告) 門真税務署長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、昭和五七年三月一一日、控訴人の昭和五三年ないし昭和五五年分の各所得税についてした各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分は、いずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張

当事者双方の主張は、次に補正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の補正

1  三枚目表九行目と末行の各「更生処分」をいずれも「更正処分」と改める。

2  三枚目裏三行目の「加算」を「合算」と改める。

3  四枚目表九行目の「、及び、同五四年分」と一〇行目冒頭の「各」をそれぞれ除き、同行の「提示」を「呈示」と改め、一一行目の「昭和」の次に「五四年分の日計票及び同」を加え、同行の「及び、」を「並びに」と、末行の「、並びに、」を「及び」と、同行の「提示」を「呈示」とそれぞれ改める。

4  四枚目裏一行目の「右日計票」を「昭和五五年分の日計票」と改め、八行目の「記載のとおり」の次に「(以下「復元日計票」ともいう。ただし、同表一の六の換金枚数欄の記載は明瞭を欠くが、「6200」である。)」を加える。

5  五枚目表三行目の「また、右の日計票、及び、」を除き、四行目の「その余」を「一一、一二月分」と、七行目冒頭の「ものである(乙第二号証参照)。」を「ものであり(乙第二号証の一ないし一〇)、また、昭和五四年分の日計票についても、筆圧痕調査を行つたところ、筆圧痕の存在は認められたけれども、復元日計票と異なり、いずれも販売枚数・換金枚数・差引枚数・収入金額の四段の数字を完全には読み取れず、実際の収入金額を推計する資料として使用することができなかつた。」とそれぞれ改める。

6  一二枚目裏末行の「昭和」の次に「五四年の三四六日及び同」を加える。

7  一三枚目表一行目の「三六五日」を「三五六日」と、同行の「他の年分」を「昭和五三年分」とそれぞれ改め、九行目冒頭に「五四、」を加え、同行の「一年分だけでいいです。」と、一〇行目の「最新の」とをいずれも除き、同行の「昭和」の次に「五四、」を加え、一一行目末尾から一二行目にかけての「・五四」を除く。

8  一三枚目裏二行目の「ちなみに」から四行目末尾までを除き、六行目の「昭和」の次に「五三ないし」を加える。

9  一四枚目表三行目の「いうべきである」の次に「。」を加え、同行末尾の「と」から一一行目末尾までを除く。

10  一五枚目裏六行目の「七四〇〇万円」を「一億円」と、末行二字目の「が」を「は」とそれぞれ改める。

11  一六枚目表八行目の「乙第一号証」の次に「の一ないし二〇」を加え、同行の「うちの大半」を「すべて」と改める。

12  一八枚目裏三行目の「提示」を「呈示」と改める。

13  一九枚目表一一行目冒頭の「証」の次に「の一ないし一〇」を加える。

14  一九枚目裏八行目と一〇行目の各「乙第二号証」の次にいずれも「の一ないし一〇」を加える。

15  二〇枚目表七行目の「提示」を「呈示」と改め、八行目の「昭和」の次に「五四、」を加え、同行の「三五六」を「七〇二」と、九行目の「提示」を「呈示」と、同行の「他の年分」を「昭和五三年分」と、一〇行目の「提示」を「呈示」と、一二行目と末行の各「三五六」をいずれも「七〇二」と、同行の「提示」を「呈示」とそれぞれ改める。

16  二〇枚目裏二行目の「できたものは、」の次に「昭和五五年分の日計票のうち、」を加え、一一行目冒頭から二一枚目表四行目末尾までを除く。

二  控訴人の当審における主張

1  推計課税の違法について

(一) 推計課税は、納税者が経理帳簿を隠匿するなど所得計算に必要な資料が不備であり、また、その態度が非協力的な場合に認められるものであるところ、控訴人は係争各年分の日計票を完備し、被控訴人の部下職員に言われるまま昭和五四、五五年分の日計票を呈示するなど税務調査に全面的に協力し、かつ、控訴人の係争各年分における事業収入金額を実額で把握する資料は揃つていたのであるから、控訴人の係争各年分の事業収入金額は、右各日計票本来の記載に基づいてその実額を算定すべきであり、推計課税の必要性がないにもかかわらず、推計課税によつてした本件各処分は、違法なものとして取り消されるべきである。

(二) 被控訴人は、本件各処分にあたつて、控訴人が昭和五五年分の日計票のみしか呈示せず、同五三、五四年分の日計票を隠匿して呈示しなかつたものと誤信していたものであり、右誤信の結果、昭和五五年分の復元日計票のみに基づいて係争各年分の控訴人の事業収入金額を推計して本件各処分に及んだものである。ところが、被控訴人が、当審において、右誤信の事実を認めた以上、従前推計課税が許されると主張していた前提事実が崩れ、推計の必要性のない違法なものであることが明らかになつたのであるから、右誤信の存在を前提とした本件各処分も違法なものとして取り消されるべきである。

(三) 仮に、復元日計票に基づく控訴人の事業収入金額の推計が適法であるとしても、それはあくまで昭和五五年分について妥当するにすぎず、同五三、五四年の二か年分についてまで右日計票を資料として推計する合理性はないというべきであり、本件各処分のうち、少くとも同各年分については違法なものとして取り消されるべきである。

2  復元日計票の不明等について

被控訴人が本件各処分の推計資料とした復元日計票二一枚(乙第一号証の一ないし二〇、第三号証の各原本である甲第一三号証の三〇四、三〇六ないし三一〇、三一二、三一三、三一五、三一九、三二二、三二六ないし三二九、三四六ないし三四八、三五〇、三五二、三五五)のうち、鑑定の結果によりすべての数字が読み取れたのは、昭和五五年一一月の九、一一ないし一五、二〇日、同年一二月の三、二一、二五、三〇日分の一一枚のみであり、その余の一〇枚の復元日計票のうち、(1) 同年一一月一八日分は、四段目の収入金額の数字が存在せず、(2) 同月二四、二七日、同年一二月一日分は、いずれも二段目の換金枚数以外の数字が読み取れず、(3) 同月二日分は、四段目の収入金額の数字が読み取れず、(4) 同月四日分は、三、四段目の差引枚数、収入金額の数字が読み取れず、(5) 同月二二日分は、いずれも判読不能であり、(6) 同月二三日分は、原判決別表(二)においては、四段目の収入金額が「10400」と記載されているが、真実は「16400」であり、(7) 同月二七日分は、同表においては、三段目の差引枚数が「6800」と記載されているが、真実は「8600」であり、一、二段目の販売枚数・換金枚数は読み取れない。以上のとおり、復元日計票二一枚のうち、一〇枚までがその正確性を否定されたものであるから、復元日計票に基づく控訴人の事業収入金額の推計は極めて不正確のものというほかなく、これに基づく本件各処分も著しく合理性を欠くものとして取り消されるべきである。

三  右主張に対する被控訴人の認否及び反論

1(一)  右主張1(一)の事実中、被控訴人が控訴人から、昭和五四、五五年分の各日計票の呈示を受けたことは認め、その余の事実は否認し、その主張は争う。控訴人は、昭和五三年分の日計票を廃棄したとして呈示せず、大阪市信用金庫門真支店に有していた「細川昭一」名義の預金について一切説明しないなど税務調査に協力しなかつたばかりか、復元日計票の発見により、控訴人が真実の事業収入金額の多くを意図的に隠ぺいするために係争各年分の日計票を記載していたことが判明したものであるから、右日計票の本来の記載でもつて、係争各年分の控訴人の事業収入金額を、実額で把握することはできず、ほかに実額を把握するに足る資料の呈示もない以上、推計は、その必要性が極めて高く、何ら違法の点はない。

(二)  同1(二)の事実中、被控訴人が控訴人から、昭和五四年分の日計票の呈示を受けていたにもかかわらず、これを受けていないと誤信し、その旨を原審において主張していたことは認め、その余の事実は否認し、その主張は争う。被控訴人は、原審において、同年分の日計票の呈示を受けていないと誤信し、その旨を主張していたとはいえ、前叙のとおり、同年分の日計票についても筆圧痕の調査を行つたものであり、その結果、いずれも筆圧痕の存在は認められたものの、前記四段の筆圧痕数字のすべてを完全に読み取ることができず、控訴人の同年度分の事業収入金額を推計する資料として使用することができなかつたにすぎず、右誤信に基づく主張をしたことの故に、復元日計票に基づく係争各年分の控訴人の事業収入金額の推計の必要性や合理性が損なわれたり、推計額に差がでてくるものではないから、本件各処分の違法を惹起するいわれはない。

(三)  同1(三)の主張は争う。控訴人は昭和五五年分のみならず、同五三、五四年分についても同様の操作をして真実の収入金額の多くを隠ぺいしていたと考えられ、その事業収入金額は、同五五年分と同五三、五四年分とが特段に異なる理由もなく、日計票に一日三万円平均の売上げを記帳し続けており、ほかに何の資料もない本件の場合、復元日計票に基づいて同各年分の事業収入金額を推計することも許されるから、本件各処分に違法の点はない。

2  同2の主張は争う。

控訴人の主張は、当審の鑑定が昭和六二年に、被控訴人の部下職員による調査が昭和五六年に行われたという差異を無視するものである。被控訴人の部下職員は、日計票に鉛筆の芯の粉末を擦り付け、肉眼により、必要に応じて拡大鏡により筆圧痕の存在を調査したところ、原判決別表(二)記載のとおりの復元日計票の存在が判明したものであり、右調査後、鉛筆の芯の粉末を擦り付けた部分を消しゴムで消したうえ、控訴人に返還したものであり、これらの所為及び六年間の時間の経過により筆圧痕数字自体が薄れることは避けられないから、鑑定時に判読できなかつたものがあつたとしても、そのことから直ちに、当初から筆圧痕数字が存在しなかつたとか、税務調査の際にも判読できなかつたとかと判断できるものではなく、右調査時には、これらすべてが判読できたものである。控訴人が指摘するもののうち、(2)の三枚以外は、判読できる部分の記載から、計算的に、判読できない部分の記載を推定することができるものであつて、その結果はいずれも復元日計票の記載と一致することからしても、復元日計票の記載の正確性は十分であり、これに基づいて控訴人の事業収入金額を推計してなした本件各処分には、何ら不合理な点はなく、適法なものである。

第三証拠〈省略〉

理由

一  当裁判所も原審と同様に控訴人の請求はこれを棄却すべきものと判断する。その理由は次に補正し、次項以下に控訴人の当審における主張に対する認定、判断を加えるほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  二五枚目裏七行目の「竹内昇」を「清元久男」と改め、九行目の「乙第四号証の一、二、」の次に「第五号証」を加え、一〇行目の「竹内昇の証言」を「竹内昇、同清元久男の各証言」と改め、同行の「及び、」を除き、一一行目の括弧書の次に「及び鑑定の結果」を加える。

2  二六枚目裏四行目の「その後」から五行目の「日計票約」までを「昭和五四年分の日計票三四六枚及び同五五年分の日計票」と改め、六行目の「大学ノート」の次に「、控訴人名義の預金通帳」と、八行目の「把握する」の次に「のに必要な現金出納帳等の」と、同行の「資料は」の次に「一切」と、一一行目の「ゲーム機」の次に「スロツトマシン」とをそれぞれ加える。

3  二七枚目表六行目冒頭の「つた」の次に「(ただし、同表一の四の収入金額、一の一七の収入金額、一の一九の差引枚数欄の各数字は、それぞれに対応する筆圧痕数字とは異なるものであるが、これらはいずれも筆圧痕数字自体の明らかな誤記或いは計算違いであると認められるので、これを訂正して正確な数字を表示し、また、一の七の換金枚数は「5450」ではなく「5400」、同差引枚数は「10500」ではなく「10550」であると認められるとはいえ、控訴人に不利益を与えるものではないので、これを無視した。)」を加え、一一行目冒頭の「(二)」を「(ニ)」と改める。

4  三〇枚目表二行目の「不鮮明なものがあり、」の次に「また、昭和五四年分の日計票についても調査したところ、筆圧痕の存在するものもあつたが、右と同様の状態であり、」を加える。

5  三一枚目表六行目の「47.211.717÷13.012.718」を「47,211,717÷13,012,718」と、八行目の「37.289.400÷10.459.605」を「37,289,400÷10,459,605」と改める。

6  三一枚目裏四行目の「第八号証、」の次に「第一五号証、」を加え、六行目の「、一五」を除く。

7  三二枚目表五行目の「少なく」を「に」に改め、同裏六行目の「三八六六万〇〇八九」を「三八六六万〇〇八四」と、八行目の「13.012.718×3.456=44.971.953」を「13,012,718×3.456=44,971,953」と九行目の「10.459.605×3.456=36.148.394」を「10,459,605×3.456=36,148,394」と、一〇行目の「11.186.367×3.456=38.660.084」を「11,186,367×3.456=38,660,084」とそれぞれ改める。

8  三三枚目裏四行目の「しかし、」の次に「復元」を加える。

9  三四枚目裏一一行目の「一一月一八」と一二行目の「同月二四」の次にいずれも「日」を加える。

10  三五枚目表三行目の「同月二一」の次に「日」を、八行目の「一ないし二〇、」の次に「第五号証、」をそれぞれ加え、九行目の「竹内昇の証言」を「竹内昇、同清元久男の各証言」と改める。

11  三六枚目表五行目の「差違」を「差異」と改める。

12  三六枚目裏一一行目の「却つて」から三七枚目表七行目末尾までを除く。

13  三七枚目裏二行目の「一ないし八」の次の「等」を除く。

14  三八枚目裏五行目の「直ちに」を除く。

二  控訴人の当審における推計課税の違法の主張について判断する。

1  まず、控訴人は、控訴人の事業収入金額を日計票の本来の記載に基づいて実額で算定せず、推計によつて算定したことの違法を主張する。事業所得の課税標準となる所得金額の算定は、総収入金額を実額で計算して決定すべきものであるが、総収入金額を実額によつて把握できない場合には、推計によつて算定することができるところ、控訴人が総収入金額把握のため呈示した昭和五四、五五年分の日計票及び控訴人が所持していた同五三年分の日計票の本来の記載は、前説示のとおり(原判決二七枚目表一一行目冒頭から三〇枚目表末行末尾まで)、実際の事業収入金額の多くを隠ぺいするために作成されたものであるから、これらに基づいて事業収入金額の実額を把握することはできず、ほかに右実額を把握するために有効と認められる資料の存在を認め難いものである以上、控訴人の係争各年分の事業収入金額は、推計により算定する必要性が高く、右日計票の本来の記載に基づいて実額を把握しなかつた点について何ら違法の点はないから、控訴人の主張は失当である。

2  次に、控訴人は、被控訴人に対し昭和五四年分の日計票を呈示したにもかかわらず、被控訴人が呈示を受けていないとの誤信に基づいてした本件各処分は違法であると主張する。しかしながら、前説示のとおり(原判決二九枚目裏一一行目冒頭から三〇枚目表末行末尾まで)、被控訴人の部下職員は、控訴人より呈示を受けた右日計票についても現実に調査したものであるから、右日計票の呈示を受けていないとの誤信に基づいて本件各処分をしたということはできない。なるほど、被控訴人が、原審において、右日計票の呈示を受けていないと誤信し、その旨を主張していたことは、被控訴人の自認するところであるけれども、右誤信があつたことのゆえに、本件各処分の違法を惹起すると解することはできない。

3  また、控訴人は、復元日計票に基づいて、昭和五三、五四年分の事業収入金額を推計することの違法を主張する。しかしながら、前示のとおり、控訴人は昭和五五年一一月七日から同年一二月三〇日までの二三日間について、実際の収入金額の三・四五六分の一しか事業収入がないとの虚偽の日計票を作成したうえ、同年度の確定申告をしたのであるから、同年度の実際の事業収入金額を確定申告にかかる事業収入金額の三・四五六倍と推計するのはまことに合理的であるということができ、更に、控訴人は昭和五三、五四年分についても、同五五年と同様の操作をして、実際の事業収入金額の多くを隠ぺいしていたものであり、同各年分の事業収入金額を実額で把握する資料が存在しないものである以上、推計によりこれを算定せざるをえないものであるところ、控訴人の営む「萱島ゲームセンター」の営業成績及び申告にかかる事業収入金額のいずれもが、同五三ないし五五年分を通じてさしたる変化はなく、ほかにより合理的な推計方式及び推計資料のない本件にあつては、同五三、五四年の二か年分についても、その申告にかかるそれぞれの事業収入金額に、復元日計票によつて算定された三・四五六の数値を乗ずることによつて推計することは、合理性の範囲内にあると評価することができる。のみならず、控訴人は同五三、五四年に、申告にかかる収入金額の三・五ないし三・六倍に相当する金額の預金をなし、また、その妻名義の分も含めて申告にかかる収入金額に照らして極端に高額の貸付けをしており、これら資金の出所につき首肯するに足る証拠もないという事情を斟酌するならば、右推計の合理性を優に肯認しうるものというべきであるから、何ら違法の点はなく、控訴人の主張は失当である。

三  控訴人の当審における復元日計票の不明等の主張について判断する。

控訴人は、鑑定の結果に基づいて、復元日計票の多くの部分が判読不能であるなどと主張する。しかしながら、証人竹内昇、同清元久男の各証言、鑑定の結果及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人の部下職員は、日計票の呈示を受けた昭和五六年六月以後、筆圧痕数字を判読するため、日計票に鉛筆の芯を塗り付け、判読後これを消去するため消しゴムで擦つたものであり、それでも鉛筆の芯を完全に消去することができず、全体が黒ずんだ状態になつていることが認められ、これらにより、また、約六年間の時間の経過により、鑑定時(昭和六二年四月)には、復元日計票の筆圧痕数字が薄れて判読できない部分が生じたであろうことは推認に難くないから、鑑定の結果、原判決別表(二)記載のとおりの筆圧痕文字を判読できない部分の存在することが認められることをもつて、直ちに被控訴人の部下職員による調査時においても同様の状態であつたと速断することはできない。右調査時においては、筆圧痕数字が読み取れたことは前認定のとおり(原判決二六枚目裏一〇行目冒頭から二七枚目表一〇行目末尾まで)であるから、(なお、鑑定の結果により判読できた筆圧痕数字に照らすと、被控訴人主張の筆圧痕数字のなかには極一部、すなわち右同表の一の七欄につき極些少ではあるが前示のような不正確な部分があるけれども、右不正確部分の存在は、控訴人に不利益を与えるものではないし、推計の結果に影響を与えるものでもなく、その余は同表の記載と一致しているのであるから、右調査が採用に値しない程正確性を欠くものとは認めがたい。)控訴人が復元日計票の不明或いは不正確と指摘する点はいずれも採用し難い。そうすると、右鑑定の結果によつても、推計計算の基礎となつた資料の正確性を覆すに足りず、控訴人の主張はこの点についても失当である。

四  以上の次第であるから、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 荻田健治郎 渡部雄策 井上繁規)

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